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「住む」と「学ぶ」が一体になるとき — Residential Education(居住型教育)とは

「教室の外」で、わたしたちはどれだけ学んでいるのでしょうか。授業や試験で測られる学び以外に——誰と暮らし、誰と語り、どんな毎日を過ごすか。それ自体を教育として設計する考え方があります。それが Residential Education(居住型教育)です。U Share がハード・ソフトの両面で土台に据えているこのコンセプトを、その源流からたどってみます。

国際学生レジデンスでの暮らし

この記事の流れ:

  1. Residential Education とは何か
  2. 起源は、中世イギリスのカレッジ
  3. アメリカが受け継いだ「ハウス制」
  4. 日本にもあった「学びの共同体」
  5. 住まいの設計が、学びを変える
  6. 研究は何を示しているか
  7. U Share が受け継ぐもの
  8. よくある質問

Residential Education とは何か

Residential Education(居住型教育)とは、住まいそのものを学びの場として設計する教育のあり方です。学びの場を教室だけに限定せず、寝食を共にし、価値観の異なる仲間と過ごす日々そのものを、教育の現場として位置づけます。

その背景にあるのが、全人教育(holistic education)という考え方です。知性だけでなく、情緒・社会性・身体・精神までを含めて、人を総合的に育てる。知識の伝達は教育の一部にすぎない、という立場です。

どんな型をとっても共通するのは、「住まい」と「学び」を切り離さないこと。日々の暮らしのなかに、成長の仕掛けを埋め込むことです。

1284ケンブリッジ最古のカレッジ Peterhouse 創立
1838緒方洪庵が大坂で「適塾」を開く
1931米ハーバードに8つの「ハウス」が完成
22,000+米国の居住型学習研究(NSLLP)が調べた学生数

起源は、中世イギリスのカレッジ

もっとも古い源流は、英国オックスフォード・ケンブリッジ両大学のカレッジ制(collegiate system)にあります。ケンブリッジ最古のカレッジ Peterhouse は、イーリー司教 Hugh de Balsham によって 1284年に創立されました。大学(University)が学位授与・講義・試験を担い、カレッジが居住・食事・少人数指導・生活支援までを担う——この二層構造が大きな特徴です。

学生はフェロー(教員)と週に1〜2回、1対1〜少人数で議論する tutorial(オックスフォード)/supervision(ケンブリッジ)で鍛えられます。ガウンをまとって囲む共同正餐 Formal Hall は、暮らしと学問が地続きであることを今に伝える象徴です。

ちなみに、映画『ハリー・ポッター』に登場するホグワーツの寮(ハウス)は、英国の寄宿学校に根づく house system を下敷きにしています。寮ごとに帰属意識を育てるあの仕組みも、住まいを核にした教育文化のひとつの表れと言えるでしょう。

アメリカが受け継いだ「ハウス制」

このカレッジ制に魅せられたのが、米国の篤志家 エドワード・ハークネスでした。母校イェールへの提案がすぐには受け入れられなかったため、彼は同じ構想をハーバードに持ちかけます。ローウェル学長はこれを即座に受諾し、総額およそ 1,000万ドルの寄付によって、8つのハウスが1931年に完成しました。

慌てて翻意したイェールにも約 1,100万ドルが贈られ、9つ(最終的に10)の residential college が生まれました。プリンストンも20世紀後半にかけて residential college 制を整えていきます。住み込み型の教育は、いまや米国名門校の標準的な姿になっています。

日本にもあった「学びの共同体」

住まいと学びを一体にする発想は、欧米だけのものではありません。とりわけ近いのが、緒方洪庵が1838年に大坂で開いた蘭学塾「適塾」です。塾生は建物2階の28畳の大部屋——一人あたりわずか一畳——で寝起きし、限られた原書を奪い合うように読み、会読(議論)の成績で席次を競いました。ここから福澤諭吉、大村益次郎、橋本左内ら、近代日本を動かす人材が育っていきました。

「塾」という形には、ほかにも豊かな系譜があります。吉田松陰の松下村塾は、寄宿制ではありませんでしたが、身分を問わず門人を受け入れ、わずか数年のあいだに高杉晋作・伊藤博文・山県有朋ら維新の中核を世に送り出しました。適塾で塾頭まで務めた福澤自身も、のちに慶應義塾へと続く塾を開いています。形は違っても共通するのは、肩書きを越えて議論を交わす濃密なコミュニティが、人を育てたという事実です。

住まいの設計が、学びを変える

では、住まいはどう設計すれば学びを生むのでしょうか。世界の学生レジデンスを眺めると、コミュニティの密度によって、おおよそ次のように整理できます。学術的に確立した分類というより、設計を読み解くための見取り図として捉えてください。

学生レジデンスの3つの型
モデル空間の特徴生まれるコミュニティ
Residential Hall住居と食堂・交流施設が分離。学生は寮と中央のアメニティを往復する出会いは中央に集中。寮内での偶発的な交流は少なめ
Residential Neighborhoodアメニティを備えた住居が近接し、ひとつの「街区」を形づくる同じ街区に長く住み、息の長いつながりが育つ
Residential College住居に食堂・図書館などが一体で併設され、小規模で自己完結する日々の動線で顔を合わせ、濃密で帰属意識の強い共同体になる
Point

鍵を握るのは、食堂の配置です。学生が毎日通る一階の動線上に食堂を置くだけで、「おう、元気?」という何気ない会話が生まれます。建築が、交流そのものを設計するのです。

研究は何を示しているか

こうした住み込み型の学びには、効果を示すデータも蓄積されつつあります。米国の大規模調査 National Study of Living-Learning Programs(主任研究者=バージニア大学の Karen Inkelas)は、40を超える大学・2万人以上の学部生を対象に、居住型学習プログラムの参加者が、通常の寮の学生よりも大学生活への適応やサポートの実感を高く感じる傾向を示しました。

ひとつ、正直に付け加えておきます。これらの知見の多くは「因果の証明」ではなく「正の相関」です。それでも、誰とどう暮らすかが、学びと成長に結びつく——という方向性は、数多くの研究のなかで一貫して見えています。

U Share が受け継ぐもの

U Share は、この150年あまりにわたる居住型教育の系譜——英米のカレッジ制から、適塾に連なる日本の学びの共同体まで——を踏まえて、ハードとソフトの両面から設計されています。会話が自然に生まれる動線、多国籍の仲間と囲む食卓、入居者リーダー(RA)とコミュニティマネージャーによる伴走。住む場所そのものを、人生でいちばん深い学びの場にする。それが U Share の Residential Education です。

ここで育った学生が、いつか世界のどこかを、ほんの少し良い場所に変えていく——そう静かに願いながら、わたしたちは今日もこのレジデンスを運営しています。

よくある質問

Residential Education(居住型教育)とは何ですか?

住まいそのものを学びの場として設計する教育のあり方です。授業や試験だけでなく、誰と暮らし、何を語り合うかといった日々の経験を、意図的に学びと成長の機会として組み立てます。英国オックスフォード・ケンブリッジのカレッジ制を源流とし、米国の大学やかつての日本の私塾にも通じる考え方です。

一般的な学生寮(ドミトリー)とは何が違うのですか?

一般的な学生寮が「安く住む場所」を提供するのに対し、居住型教育は暮らし全体を学びとして設計します。交流が生まれる建築の動線、多国籍のコミュニティ、入居者リーダー(RA)やコミュニティマネージャーによる伴走、定期的なイベントなどを通じて、住むこと自体が成長につながるよう意図されている点が違いです。

U Share はどのように居住型教育を実践していますか?

U Share では、会話が自然に生まれる共用部の設計、世界各国から集まる仲間との多国籍コミュニティ、RA・コミュニティマネージャーによる日英バイリンガルのサポート、そして学びや交流を促すイベントを通じて居住型教育を実践しています。詳しくは U Share Student のページをご覧ください。

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